夜が明け外に出ると、重たく降り積もった灰が辺り一面に広がっていた。
灰の影響で通勤に時間がかかることを予想し、いつもより早めの出勤。外に出て車に向かう。地面を踏みしめるたびに、足下の灰がザクザクと音を立てる。そして、灰にまみれて無残な姿となった愛車がそこにあった。
風で舞い上がり、しばらくは空中を漂う細かい火山灰には、カーボートはほとんど役に立たない。
灰色になった車体に、上からホースで一気に水をかける。
積もった灰を落とし、ともかく前が見える状態になったのを確認して車を走らせる。
車を通しても、路面がいつもと違うことがはっきりと分かる。
通りに出ると、それほどスピードの出ていない車の下からも、もうもうと細かな灰が舞い上がる。
対向車、特にトラックとすれ違うと、跳ね上げられた灰が車に当たってビシビシと音を立てる。
朝霧ロードを通って三股を出るときに通る小高い丘をこえ長い下り坂にさしかかる。つい最近道路の両側に植えられていた杉の木が伐採され、山之口の町が一望できるようになった場所だ。
丘の上から見えたその風景に、思わず息をのむ。
色の消えた町並み。そのあちこちで、積もった灰が舞い上がり煙のように町を覆っている。まるで、いつかテレビで見たこのとある戦場の風景。
しかし、これはまだ序の口なのでありました。
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